住まいと電化の連載コラム「高性能住宅の真実」
月刊「住まいと電化(日本工業出版)」へ連載した、福地脩悦著「高性能住宅の真実」を転載してご紹介致します。
第2回/何が本物の高気密高断熱か
量産住宅が果たした使命
日本本来の家は、この気候風土に適した構造として風通しを重視したり、構成する材料も通気性があったり、自然透湿を促す性質のものであったりと、夏の高温と多湿を回避する様々な工夫を行ってきたのです。その分、冬の寒さに対しては、いろりを設け、生火を焚き、前のあいたチャンチャンコなどを着込むなど、生活そのものを工夫する事で、独自の居住文化を形成してきたのではないでしょうか。
しかし、戦後の経済成長を飛躍的に活性化させたのがこの住宅の大量生産供給です。家づくりが国造りのための重要な産業となりました。
一本一本削って仕上げていた羽目板(内壁材)や下見板(外壁材)は、工場のラインで大量生産された大きなサイズの石膏ボードやサイディングに変り、その施工性が従来と比べものにならないくらい向上する事となります。併せて家の断熱性や気密性も向上し、火を焚く生活から家そのものを暖房する時代へと一気に変貌を遂げてまいりました。
世界に誇る経済大国になるための大きな原動力であり、現在の私達の生活そのものが、その恩恵の延長にあることを認識しなければなりません。
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その結果30年前後で解体される、先進国では最低といわれる短い住宅寿命、しかし、この責任を誰に問う事も出来ないのです。
日本の住宅から学ぶもの
しかし、このままで良いとはいえない現況を前回号で記述しました。
日本の家は、木材と土壁、萱葺き屋根と杉柾天井、玉石の基礎と太い木材の土台と厚い木床材、いずれもその相性がフィットしていました。何百年の知恵と工夫が自然に創り出した素材の相性だったのでしょう。
新建材で外壁をつくる場合、外壁材、防水材、通気層、通気シート、断熱材、内壁材、そして内装仕上げ材と、通常でもこの7種類の構造や部材の複合で構成します。この組合せによっては性能をつくれなかったり、つくれても短期間に性能が劣化する場合があります。
「この気候風土に適した構造は、風通し、構成する材料の通気性、自然透湿を促す性質」新建材の組合せでこの要件を満たすためには、例えば、外壁材に使用する材料の性質によって、その複合の構成まで変えなければなりません。
代表的な実例でいえば、断熱材の含んだ湿気を排出するための効果を期待するため、外壁の外側に通気層をつける事になっています。
しかし、この通気層は、日射熱の当たらない部分では全く効果を期待できません。むしろ、夏場の湿気を呼びこむ弊害のほうが大きいのですが、依然とこの部分を改めようとする機運すら感じられません。
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つまり、壁の構造はその複合構成の組合せにとどまらず、東西南北、全方向の構造の組合せまで考慮しなければならないのです。この主張を一方的、主観的な論法だと断じるには、30年寿命の現実をどのように説明できるかを問わなければなりません。
売り手と買い手の責任
売らんがための家づくりが横行し、住んでからの問題を度外視した結果が約30年の寿命要因だとしたら、売り手にも買い手にもその責任があるといえないでしょうか。住んでからの問題を最小限にとどめるための手法が存在するからです。
売り手側は情緒優先の営業手法をあらため、住んでから問題が生じないための性能向上の競争原理を働かせる事を優先すべきであり、住み手側も購入する際に、その性能所在をしっかりと確認することを常識とすべきなのです。
私はインターネットを活用した、NPO法人「住宅110番」のレギュラー回答者を務めております。相談の殆どが、新築した住宅において、居住してから様々な問題が発生し、施主も施工者も右往左往する状況を垣間見る事が出来ます。
耳障りの良い営業トークに惑わされ、見た目と価格に妥協して、肝心の性能確認を怠った施主の責任も大である事を実感しています。
家の性能とは
住んでから問題の生じない家の性能とはどんなものが挙げられるかを記述します。
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地震に強いとか、火災対策などは、現在の建築基準法でほぼ完璧に近いほど確立しているといえると思います。
日本の建築基準法ではこのジャンルのレベルが非常に高いと評価されています。阪神淡路大震災の時に、基準法を遵守した建物の多くが被害を免れたという実績もありますし、昨年、基準法が改正され、さらにその性能レベルを増しています。
一方、居住環境も含む温熱環境や高耐久に関る性能が無視され続けて来た現実があります。
売らんがための住宅供給には、売り手側が、この性能を施主に説得するだけの知識も無く、買い手側も大した興味も示さなかった事が大きな要因です。
何が本物の高気密高断熱か
新建材で家を造れば、多少なりとも断熱、気密の性能を得ることができます。しかし、断熱と気密の上に「高」を付ける意味が誰も説明出来ません。また、低気密、高断熱と謳った営業トークまで存在します。
断熱性能は、気密性能と相互でなければ断熱の効果を診る事は出来ません。どんなに断熱性能が高くとも気密が無ければ冬は暖気が逃げ、冷気が床付近に停滞します。
夏は、冷房器でせっかく取った湿気の持つ熱(潜熱)をどんどん外部から呼び込んでしまいます。理屈ではなく実際に住んでみれば良く解る事なのです。
特に温暖地での高気密、高断熱と称する住宅は、徹底した夏場対策が成されているかどうかが肝心です。また、この夏場対策と合わせて、構造体の含水量管理がどのように成されているか、気密性能による室内環境をどのようにコントロールしているのかなど、断熱と気密の性能が向上すれば、その性能に伴なう沢山の問題に対応する技術が必要となります。
「換気オプション」などと謳った住宅がありますが、換気は造った家の気密性能の程度で、その方法がすべて異なるのだといい切れます。造った家の気密性能の程度によっては、厨房、暖房の燃焼機器に制限を加えるくらい、重要な事項になります。
次回は家の性能と設備計画の実態と対策について記述します。
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